【プロゴルファーの確定申告】経費や節税についてポイント解説

|

2021.11.12

プロゴルファーも一人の個人事業主として1年間の所得を計算し、確定申告する必要があります。

とはいえプロゴルファーの収入や経費項目は多岐にわたることに加え、スポーツ選手特有の税務上の論点もあったりします。

そこで今回はスポーツ選手とくにプロゴルファーの税金について経費化のポイントや平均課税制度、マネジメント会社設立による節税対策について解説していきたいと思います。

(1)プロゴルファーの収入

プロゴルファーは他のスポーツ選手と同様に「個人事業主」として扱われます。

そのため1月~12月までの一年間の所得に基づき計算される所得税を翌年の3月15日までに税務署に確定申告する必要があります。

それではプロゴルファーの収入について見ていきましょう。

①賞金

ツアープロの場合大会に参戦し好成績をおさめると賞金がもらえます。

プロゴルファーに対する賞金は源泉徴収の対象となります。

②スポンサー収入

プロゴルファーの中には、スポンサーが付き金銭的な支援だけでなくクラブやボール、シューズといった物品の提供を受ける方もいます。

この場合、金銭については先ほどと同様に源泉徴収されますが、物品については受贈益や雑収入などの項目で収益として計上します。

③その他の収入

ティーチング料や講演会、CM、書籍などの印税、最近ではYoutuberとしても活躍されてるプロゴルファーの方もいらっしゃいます。

注意点としては、税務上収益の認識時点は役務提供した時点に認識することになります。

入金されたタイミングではないため注意が必要です。

例えば12月に役務提供があり翌年1月に入金があった場合の収益認識は12月になります。

④源泉徴収

個人の所得税については申告納税方式を採用しており、税金を自ら計算し税務署に納税する方法が採用されています。


この点、報酬の支払いを受ける時点であらかじめ所得税があらかじめ控除されている場合があります。

先ほどの賞金などが源泉徴収の対象となる取引になります。

この源泉所得税は所得税の前払いのため確定申告において1年間で計算したトータルの所得税から源泉徴収分は控除して計算します。

もし控除しきれなかった場合には、還付を受けることができます。

なお、源泉徴収の税率は支払金額が100万円以下の場合と100万円を超える場合で税率が異なります。

支払金額が100万円以下の場合の源泉徴収税額は、「支払金額 × 10.21%」。

支払金額が100万円を超える場合の源泉徴収税額 は、「(支払金額 - 100万円)× 20.42% + 102,100円」の計算式で求めることができます。

ただし協賛者が提供するプロゴルファーの賞金についての源泉は、賞金等の額から50万円を差し引いた残額に10.21%の税率を乗じて算出します。

いくらの金額が源泉されているか確認したい場合には、

例年1月末ごろに取引先から送られてくる『支払調書』を確認するようにしましょう。

支払調書についてはこちら

(2)必要経費になるもの

必要経費になるものをいくつか例示すると以下になります。

注意点としては、下記の費目であったとしても事業に関連するものでなければなりません。

プライベートで使用したものについては経費にはなりませんのでご留意ください。


・宿泊費

・交通費

・エントリーフィ

・プレーフィー

・キャディ費

・コーチ代

・ジムなどのコンディショニング代

・マネージャーなどへの人件費

・トレーニングのための機材購入費(トラックマンなど)

・消耗品(ボール、シューズ、クラブ等)

・関係者との会食費・接待費

・税理士などへの支払報酬

・傷害保険や火災保険、自賠責保険

・協会への会費

なお上記以外にも事業の必要性から客観的に必要だと認められる支出であれば経費化可能です。

プロゴルファーは基本実費負担となるためツアーに参戦しているプロでも経費だけで年間1千万円近くかかるといわれています。

(3)平均課税制度の活用

所得税には臨時所得なども含め収入が急に増えた場合や変動が激しい方に対する調整措置として平均課税という課税方法が設けられています。

平均課税制度とは、変動所得や臨時所得において、所得税の負担を軽くするために税額を算出する方法であり、

通常の超過累進税率よりも税率が低く設定されています。

多いときには平均課税を利用して、少ないときには超過累進課税を利用する、

というようなことはできないように平均課税適用には条件があります。

・所得が変動所得だけのとき、変動所得額がその年の総所得額の20%以上であること。
※過去2年間に変動所得がある場合、その平均額を超える場合にかぎります。
・所得が臨時所得だけのとき、臨時所得額がその年の総所得額の20以上%であること。
・変動所得と臨時所得の両方の所得があるとき、その年の変動所得額と臨時所得額の合計がその年の総所得金額の20%以上であること。
※その年の変動所得が、過去2年間の変動所得額の平均額以下であれば、その年の臨時所得額のみが総所得額の20%以上であること。

平均課税制度が適用できると、通常の超過累進税率よりも低い税率を適用して税額を計算できます。

計算方法は、臨時的に受け取った契約金や更新料について、その5分の1(20%)の金額を算出します。

次に、その算出した金額に超過累進税率をあてはめて乗じた金額を5倍することで税額を計算します。(所得税法第90条1項) 

具体的に数値例を使って見ていきましょう。

所得1,000万円の場合、通常の課税と平均課税制度の場合で納税額が下記のように変わります。

【通常の場合】

10,000,000円×33%-1,536,000円=1,764,000円 

所得税の納税額1,764,000円 

【平均課税制度を利用した場合】 

10,000,000円×20%=2,000,000円 (2,000,000円×10%-97,500円)×5=512,500円

所得税の納税額512,500円 

このように平均課税制度を利用できる場合には大幅な節税を実現することができます。

平均課税制度を利用するにあたっては、確定申告書にその旨を記載するとともに、

「変動所得、臨時所得の平均課税の計算書」を添付が必要です。 

(4)マネジメント法人の設立

マネジメント会社は芸能人やスポーツ選手等の節税対策のためによく活用されています。

以前の記事でもご紹介しましたが、所得税は超過累進税率を採用している関係で高額所得者ほど税負担は重くなります。

一方で法人については一定の税率が適用されるため高額所得者にとっては法人化した方がメリットが大きくなります。

①法人と個人に所得を分散し節税

仮に所得が2,000万円であった場合、法人化することでどれくらい節税することが出来るでしょうか。

このシュミレーションには以前ご紹介したfreeeの「法人成りの税額診断」が便利です。

所得2,000万円、役員報酬年間500万円と仮定しどれくらい金額に違いがでるのか見てみましょう。

【個人事業主の場合】

・所得税  4,497,700円

・住民税  1,810,300円

・社会保険料 966,080円

・事業税 855,000円

合計:8,129,080円

【法人の場合】

・法人税 2,780,000円

・住民税 413,500円

・社会保険料 1,387,440円

・事業税 1,372,600円

・所得税 392,600円

合計:6,346,140円

差額で1,782,940法人化した方が税金と社会保険料負担が軽減されることになります。

②社会保険料の負担軽減

上記でシュミレーションした通り社会保険料負担の軽減にもなります。

③税務調査対策にも

あまり強調されることはないですが、個人事業主の場合、事業とプライベートがごっちゃになりやすく、税務調査で指摘されるリスクがあります。

法人化することでお金の流れを見える化することで、事業分とプライベート分を完全に分け税務調査対策にも有用になります。

④事務負担の増大

法人化すると事務負担が増えます。

法人設立手続きのほか、設立後にも給与支払いに関する源泉徴収事務、年金事務所や労基署への書類の提出、毎月の給与計算、年度末の法定調書の作成、年末調整、税務申告などなど事務負担が個人事業主より増加します。

そこで法人化する場合には業務負担の軽減のために「ITツール」を積極的に活用するようにしましょう。

会計ソフトなら個人的にはクラウド会計をお勧めしています。

freee

マネーフォワード

⑤マネジメント会社の留意点

実態のない法人は否認される

法人を設立することで所得税より低い税率の適用により節税することができます。

しかしながら、我が国の税務当局もなんでもかんでも認めているわけではありません。

「ペーパーカンパニー」や「ただの報酬受け取り会社」は、法人としての活動の実態を伴わないため法人格が否認されるリスクがあります。

(参考)滞納処分の法人格否認の法理の適用

税務上法人格が否認されるケースは、会社法における『法人格否認の法理』を準用する形をとっており、

「法人が形骸化している」もしくは「法人格を濫用」し租税回避行為をした場合に、法人格を否認し、

その背後にいる個人を所得の帰属先とし課税しようとするものです。

言い換えると、法人として実態を伴って定款の事業目的の範囲内において適切に活動していれば、

当然に法人格は否認されないため、法人の活動に起因する所得は法人に帰属することになります。

ポイントとしては、

・会計を法人と個人で適切に区分する

・マネジメント契約を締結し、法人の業務範囲を明確化する

・マネジメント契約に業務のスケジュール管理や宣伝活動、営業活動、資産管理等を含める

・定款にマネジメント会社の事業目的を記載する

といったところがポイントになってきます。

また法人化する際に定款の事業目的は以下のように記載すれば良いかと思います。

(定款記載例)

・スポーツ選手のマネージメントおよび肖像権管理 

・スポーツ事業の企画、制作、興行並びにその販売

・スポーツ選手及びインストラクター等の肖像、署名、愛称等を物品、商品、サービス等に使用し、使用せしめる権利の管理並びに販売

・芸能、スポーツその他各種娯楽の興行および芸能プロダクションの経営 

・スポーツ選手その他の著名人のマネジメントおよびプロモート業務

・スポーツ選手の育成及び指導

マネジメント会社の資金の流れ

マネジメント会社を設立した場合におけるマネジメント会社のお金の流れは、

①取引先からマネジメント会社に報酬等が支払われ、ここからマネジメント会社がマネジメント料を控除

②マネジメント会社から役員と従業員に給与として支払う

という流れになります。

どうしてもすべての報酬を法人を通して計上したくなりますが、

個人名義の賞金などは個人事業主としての所得は個人所得に帰属しますので、この場合法人ではなく個人の確定申告の対象となります。

(5)まとめ

プロゴルファーの税金周りについて、経費化のポイントや平均課税制度など特有の論点について紹介してきました。

マネジメント会社設立による節税や個人の確定申告などもしご興味がありましたらお気軽にお問い合わせください。

ゴルフ好きの税理士が対応させていただきます。


スポーツ選手の税務は複雑な税務処理が多く税金周りで時間と労力を取られてしまっては大きな損失です。

当事務所ではプロゴルファーが最高のパフォーマンスを発揮できるよう、最大限のお手伝いをさせていただきます。