個人事業主が法人化するベストなタイミングは?

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2021.10.26

個人事業主だと所得税も国民年金も健康保険料が負担が重いですよね。

働いても働いても税金と社会保険でお金がどんどん出て行ってしまいます。

その対策としてマイクロ法人や一人会社などと呼ばれる出資者兼経営者が一人の法人のケースが増えてきました。

これは平成18年の会社法改正で最低資本金制度の撤廃、設立手続きの簡素化等により一人会社の設立がしやすくなったことが背景にあります。

会社法改正についてはこちら。

そこで今回は個人事業主やフリーランスが一人法人といったマイクロ法人にした場合のメリットやデメリットについて解説していきたいと思います。


(1)個人事業主と法人の比較

まず個人事業主と法人の違いについて見ていきましょう。

①初期費用

個人事業主は事業を始めるにあたり税務署や役所への届出のみですぐに無料で始められます。

これに対し法人については法務局に法人設立登記の申請を行う必要があります。

この設立手続きでは登録免許税や公証人への支払いなどが発生します。

合同会社の場合で6万円~、株式会社の場合は20万円~費用が発生します。

一般的には登録免許税以外にも法人印鑑の作成や行政書士手数料などもかかるため、

合同会社は9万円前後、株式会社は25万円前後が相場になります。

費用の内訳などについては詳しくはこちら

②税金の種類

個人事業主に係る税金は「所得税」、「住民税」、「個人事業税」、「消費税(課税事業者のみ)」になります。

これに対し法人の場合は「法人税」、「法人住民税」、「法人事業税」、「 消費 税(課税事業者のみ) 」となります。

所得税は超過累進税率が採用されており、所得が大きければ大きいほど税率が上がりますが、

法人税率は資本金1億円以下の中小企業の場合、年間800万円以下の所得については、税率15%、それ以上の部分は23.2%となります。

このように所得が大きければ大きいほど法人化のメリットを享受することが出来ます。

③経費

個人事業主では自分への給与は全額経費になりません。

また生命保険に入っていたとしても、所得控除できる金額には制約があります。

これに対し法人の場合、自分への給与を役員報酬として経費にすることができるなど経費化の範囲は広くなります。

④赤字の繰越

赤字が発生した場合、個人事業主で青色申告していると3年間にわたって赤字を翌年以降の黒字と相殺させることができます。

法人の場合この繰越期間は原則10年間になっています。

⑤社会保険(年金・健康保険)

個人事業主では社会保険として国民年金と国民健康保険に加入することになります。

これに対し法人の役員は厚生年金と協会健保等に加入します。

なお、法人の場合は、社会保険負担について事業主と従業員分の双方を支払うことになります。

以上を表でまとめるとこうなります。

(2)法人のメリット・デメリット

①メリット

・税負担が軽減できる

所得税は超過累進税率が採用されている関係で所得が増えるに従い税率も上がっていきます。

令和3年10月時点での所得税の最高税率は45%です。

これに対し法人税率は先ほどご紹介した通り、 年間800万円以下の所得については、税率15%、それ以上の部分は23.2% です。(資本金1億円以下の普通法人)

また法人にすることで税率が低くなるだけでなく役員報酬等を使い所得を法人と個人に分散させることでトータルでの税金負担を軽減させることができます。

・社会保険料の負担が軽減される

社会保険料の負担については健康保険料に大きな違いとなって表れてきます。

例えば、個人事業主で39歳独身、所得800万円の場合、国民健康保険料は年間約82万円の負担になります。(居住地により負担金額は変わります。)

これに対し法人を設立し、同じく役員報酬控除前所得が800万円、役員報酬を年間400万円(月額33万3千円)と設定した場合の健康保険料負担(全額)は、

年間42万円(月額3.5万円)と個人事業主の場合と比較すると大きく軽減することができます。

・人材確保がしやすい

求人募集などで法人(特に株式会社)の方が人材確保がしやすいです。

個人事業主の下で働くより、会社の「正社員」として働きたいと思う人の方が多いからです。

また法人化すると社会保険への加入が義務付けられますので、「社会保険」を条件に求職している人にもアプローチしてもらいやすくなります。

・融資がおりやすい

法人にすると税務申告書に決算書のほか勘定内訳書や法人概況説明書なども作成し税務署に申告します。

この関係でこのような財務情報が銀行にとって正しい決算書(損益計算書、貸借対照表)により正確な評価につながり仮に所得が個人事業主と同じであったとしてもより有利な条件で融資を受けやすいといえます。

・補助金や助成金などの金額が大きい

個人事業主と法人で補助金や助成金、給付金の金額が異なっていることがあります。

②デメリット

・事務負担が増える

会計ソフトの導入、社会保険料の支払い、法人税務申告負担、各種税金の支払い(個人事業主は税務署のみ。法人は税務署、県税事務所、市役所)など

個人事業主と比較し事務負担が増えます。

・赤字でも均等割負担

法人にするとたとえ赤字であったとしても均等割を負担します。

資本金の額や本店所在地の自治体により均等割の金額は異なってきますが、

東京都23区に主たる事務所がひとつある場合、最低7万円の負担が赤字であったとしても発生します。

(3)法人化するタイミング

損益分岐点を計算

法人化した方がいいのか、このまま個人事業主でいた方がいいのか迷いますよね。

そんな方のために便利なツールをご紹介します。


実はfreeeが「法人化の税額診断」シュミレーションツールを公開しています。URLはこちら

一年間の売上見込み、経費率と役員報酬の金額を入力することで法人化した方が良いのか。

それとも個人事業主のままの方がいいのか判断できてしまいます。


注意点としては、平成30年8月の税法に基づいて法人税・所得税・住民税・事業税・国民健康保険料等の納税額を簡易計算していることと、

申告先の自治体や、扶養親族の人数によっては、概算金額に違いが出る事があることです。

いちいちExcelなどで計算すると時間がかかってしまうので、freeeのこのツールを使うのをお勧めします。

(4)まとめ

法人化するベストタイミングというのは一概には言えませんが、よく言われているのが所得600万円を超えてきたら法人化を検討するのが良いと思います。

役員報酬の金額や経営者の年齢、家族構成により所得税や社会保険の金額が変わってくるからです。

言い換えればシュミレーション上は現状は個人事業主の方が有利であったとしても、

経営者の年齢が若く、扶養なども特にない場合には早めに法人化してしまうのも一つの手ではあります。

また法人化の初期費用のうち登記手数料などを自治体で補助してくれる取り組みもあったりします。

本店所在地とする予定の自治体にそのようなスタートアップを支援する取り組みをしているか確認してみましょう。