審査で通りやすい日本政策金融公庫の創業計画書の書き方~前編~

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2021.09.24

前回の記事では、日本政策金融公庫の創業融資の全体像について見てきました。

今回は日本政策金融公庫の創業融資で重要なポイントの一つ「創業計画書」について解説していきたいと思います。

とはいえ、人生ではじめて見る創業計画書。

どういう風に記載すればいいかわからないですよね。

そこで今回は創業計画書の書き方について記入例を参照しながら具体的に解説していきたいと思います。

(今回も飲食店を前提にしていますが、他の業種にも参考になるかと思いますが、あらかじめご了承ください。)

(1)日本政策金融公庫の創業融資

新しくビジネスを始めるとき資金調達先として政府系金融機関の日本政策金融公庫(以下公庫)の創業融資制度が有名です。

民間の金融機関だと実績の乏しい個人に対してなかなかお金を貸してくれませんが、公庫はその限りではありません。

とはいえ、公庫もただではお金を貸してくれません。

起業しようとしているビジネスの内容や将来性、経営者の経歴や過去の信用情報、自己資金の有無など幅広く審査されます。

審査に通らないとお金を貸してくれません。

その審査のベースとなるものが「創業計画書」です。

(2)創業計画書

創業計画書の雛形は日本政策金融公庫のホームページに公開されています。

日本政策金融公庫の創業計画書に記載する項目は、以下に通りです。

・創業の動機

・経営者の略歴等

・取扱商品、サービス

・取引先

・従業員

・お借入れの状況

・必要な資金と調達方法

・事業の見通し

・自由記述欄

それでは上記の項目について一つずつ具体的に見ていきましょう。

まずは「創業の動機」からです。

(3)創業の動機

「創業の動機」には、4行しかスペースがありませんのでフォーマットにおさまるようコンパクトに記載しましょう。

主なポイントは2つ。

①起業しようとしている分野の事業の経験を記載

②起業に至るまでの経緯を簡潔に記載

まずこれから起業しようとしている分野に関する経験を審査では重視します。

これは日本政策金融公庫の数十年間の創業融資業務から、起業する経営者が同分野での事業の経験があったほうが、圧倒的に成功確率が高かったというデータがあるからです。

次に起業の経緯を記載します。独立開業に向け転職やセミナーに参加してきたなど主体的な行動を記載していくとより印象が良くなります。

なお、起業する事業分野についてこれまで経験がない場合は、新たな事業にも生かせる他分野の経験や知識、ノウハウがあることということを記載しましょう。

 

創業の動機

食生活を見直したことをきっかけにそれまで優れなかった体調が劇的に良くなり飲食に興味を持ちました。
新卒入社した食品製造販売事業を行う会社で4年間働き、私が企画した商品が社内でトップの売上を記録するなど実績を積んできました。
その後自らも直接お客様に料理を提供したいと思い、飲食業に転職。エリアマネージャーとして複数の店舗を管理してきました。
これまで培ってきた経験を活かせると思い、無農薬にこだわった野菜をふんだんに使った健康志向の料理を野菜不足のビジネスマンに向け提供したいと思い新たに飲食店をオープンさせました。

(4)経営者の略歴等

経営者の略歴等については、「同業・類似の事業でいかに実績を残してきたか」や「サラリーマン時代にいかに起業の準備となるような経験をしてきたか」を主眼に記載していきます。

動機とは異なり事実を客観的に記載しましょう。

経営者の略歴等

平成22年3月 :〇〇大学商学部卒業 会計学を学ぶ
平成22年4月~:㈱〇〇〇にて、4年間、食品製造販売事業に従事。主に商品企画を担当。
平成26年4月~:他の業務経験の必要性を感じて、㈱△△に転職。主に店舗マネジメント業務に従事。
平成28年1月 :事業プランが固まったため起業を決意。事業を行うため、勤務先を退職。

(5)取扱商品・サービス

ここでは、始めようとしている事業のビジネスモデルや強みについてわかりやすく説明する必要があります。

①取扱商品・サービス

取扱商品やサービスがどういったものか、その分野に詳しくない人にもわかるように説明する必要があります。

今回の記入例は飲食業を前提にしていますのでわかりやすいですが、専門用語が出てくる場合には注釈をつけるなど工夫しましょう。

取扱商品・サービス

①ランチ
魚と野菜を使った定食を中心としたメニュー構成
客単価@1,000円(売上シェア20%)
②ディナー 
有機野菜と魚介類を中心にし、リーズナブルでありながら本格的な料亭の味をコース料理として提供
客単価@10,000円(売上シェア80%)

②セールスポイント

・主力商品やサービスを記載する。(3つまで)

・可能な限り商品やサービスの特性を出す

セールスポイント

・独自にルート開発した日本海から毎日直送される新鮮な魚介類と有機野菜を使った料理を提供。
・料理長は都内有名料亭で10年間修業しており手の込んだ本格的な料理を提供
・都内のビジネス街に立地。店内は落ち着いた雰囲気で接待などのビジネスシーンでの利用もできる

③販売ターゲット・販売戦略の記載例

・自社の商品・サービスはどのようなもので

・どのような価格帯で販売するか

・どの場所で(なぜその立地を選んだか。)

・どのようにして販売するか

・セールスポイントと多少被ってもOK

セールスポイント

有機野菜と魚介類を中心とした和食店を東京都千代田区大手町○丁目に出店。
大手町は日本有数のビジネス街であり、多くのビジネスシーンでの需要がある。
ランチは定食を中心に@1,000円で、ディナーはコースを中心@10,000円で提供。
ランチ営業はオフィス街でもある大手町や丸の内で働くビジネスマンやOLにお店の味を食べて知ってもらい、利益率の高い夜のコースに足を運んでもらえるよう昼のランチメニューは幅広いメニューで充実させている。

④競合・市場など企業を取り巻く状況

・市場の大きさや成長性を分析

・業界の状況

・サービスを展開する地域の人口や競合他社の数

・客観的事実を記載する

セールスポイント

東京都千代田区大手町〇丁目に飲食店を出店。 区の人口は〇〇に対し飲食店の数は○○。自店舗と同程度の単価の飲食店は○○。 飲食業は○○の影響などで○○の状況だが、今後○○の要因から○○になると見込んでいる

(6)取引先・取引関係等

創業計画書における取引先とは、販売先、仕入先、外注先の3つになります。

販売先・仕入先・外注先、それぞれの取引先名、シェア、掛取引の割合、回収・支払いの条件を記載します。

(※シェアは、販売先であれば売上の何パーセントを占めるか記入します。掛取引の割合とは、代金を後日にもらう取引もしくは代金を後日に支払う取引の割合のことです。回収支払いの条件は、具体的な代金の受け渡しの条件の事)

・”月末締め翌月末回収”のように、後で代金をもらう掛取引の場合、創業融資の申込みまでには、取引見込先を挙げるだけではなく取引条件まで確認しておく必要があります。(仕入先も同様)

・可能な限り固有名詞にすること(ex.販売先 株式会社○○)

・販売先と仕入先に結びつきがあれば記載する

・契約書や注文書がすでにある場合には添付

・まだ取引が開始されていない場合は、取引先とすでに打合せしているなどでアピール

・外注費があれば「7.必要な資金と調達方法」の運転資金に記載しておくと融資対象になり有利に働くので必ず記載する   

・人件費があれば”月末締め25日払い”などと記載

(7)従業員

従業員数とパート・アルバイトの人数を記載します。現時点の採用予定数で構いません。

なお、創業計画書には記入する項目はありませんが、時給や勤務予定時間等は決めておきましょう。

(8)お借入れの状況

お借入れの状況には事業資金以外でローンがある場合、残高と年間返済額を記入します。

なお、住宅ローンについては、住宅ローンが組めるだけの信用が借入者にある証拠になるので、
返済スケジュール通り返済していれば住宅ローン自体が審査に悪影響を及ぼすことはないので、

住宅ローンがある場合も記入しましょう。

(9)まとめ

今回は日本政策金融公庫の創業計画書の記載について解説していきました。

創業のきっかけ、経歴、技術、事業の特徴などのポイントを簡潔に記入していただければ問題ないかと思います。

次回は後編として必要な資金と調達方法と事業の見通しを見ていきたいと思います。